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結婚から会議、武道まで!? 幅広く使える哲学の思考法とは

齋藤孝先生の『使う哲学』より、実生活で使える哲学実践術。

弁証法を生かした武道家

『武道とは何か』などの著作もある、南郷継正氏という武道家がいます。その南郷氏は哲学者でもあった三浦つとむ氏の『弁証法とはどういう科学か』(講談社現代新書)という本に感銘し、強い影響を受けたようです。

 弁証法には「対立物の相互浸透の法則」「量質転化の法則」「否定の否定の法則」の三つの法則があります。

 その中の量質転化の法則について、三浦氏の『弁証法とはどういう科学か』には「量的な変化が質的な変化をもたらし、また質的な変化が量的な変化をもたらすというのが『量質転化』の法則です」と書かれています。

 量的な変化が質的な変化をもたらすということは、非常に多くの量を行なうと、質が変わってくるということでもあります。

 武道家の南郷氏はこの点にも着目して、量を行なうことを武道理論の一つとして挙げています。南郷氏は弁証法を机上の空論にしないで、自分のこととして活かしているのです。

 私もかつて武道をしていたので、この「量質転化の法則」は実感としてもよくわかります。ある技をしっかり身につけるには、5000回程度の練習では不十分でした。最低でも1万回、できれば2万回以上練習を重ねないと完全には自分のものにならないというのが私の実感です。

 南郷氏は弁証法を軸にして武道論を組み立てました。彼は哲学を生きている人の一人といえるでしょう。

 

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齋藤 孝

さいとう たかし

明治大学文学部教授。



1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士を経て、現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。



250万部を超えるヒットとなった『声に出して読みたい日本語』シリーズ(草思社)のほか、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『大人の精神力』、『10歳までに身につけたい「座る力」』(いずれも小社刊)など著書多数。


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